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秋の京都で源氏刀を 膝丸と髭切見てきた/北野天満宮 2023年12月3日・大覚寺 12月4日まで

昨日は本興寺で数珠丸を見て、大阪のゲストハウスに宿泊しました。

▼昨日の話

明けて11月4日は京都で源氏刀を見てきたんですが……その前に、泊まったお宿がなかなか良かったので紹介させてください。

ゲストハウス由苑

ゲストハウス由苑

梅田から一駅、福島駅すぐ近くにある「ゲストハウス由苑」。もと料亭の建物をリノベーションしており、1階にはカフェが入っています。

芥川珈琲

カフェのスタッフさんがゲストハウスのスタッフも兼任しており、チェックイン時はカフェで声をかける方式でした。今回泊まったのは4500円の女性ドミトリー。畳のお部屋に2段ベッドが2つあって、各ベッドの枕元には大きめリュックがすっぽり入るくらいの鍵付きロッカーが備え付けられています。

築100年以上の建物なんですって!あちこち綺麗にリノベーションされていますが、随所に古いものが残されています。

ゲストハウス由苑

いかにもゲストハウス、という感じのやつもある。

ゲストハウス由苑

ラウンジには共用キッチンがあり、調理器具や食器類が揃っています。自由に飲めるコーヒーやお茶もある(インスタントだけど)。料理が面倒なら、階段を降りて1階のカフェに行けば何かお腹に入れることができる。

芥川珈琲

看板メニューのスパイスカレー「大陸カレー」にはいろんな具が載ってる。「1日何品目食べなさい」ってやつ、この一皿でクリアできちゃいそう。罪悪感のないカレーでした。

芥川珈琲

このお店、普通にTwitterでおすすめカフェとして流れてきたりするんですよね。福島駅から梅田まで徒歩20分くらいなので全然歩ける距離ですが、スタッフさん曰く「観光客はここまでこなくて、なおかつ地元の人に人気のエリア」とのこと。

確かに観光地っぽい喧騒はなくて、でも個人の飲食店や飲み屋がいっぱいあって、探索しがいのありそうな街。一方でドラッグストアやコンビニやチェーンの飲食店もしっかりあるし、大阪の滞在に福島周辺を選ぶの、なかなか良さそうだなって思いました。

由苑 公式サイト

11月4日朝、嵐山へ

そんな由苑で過ごした一夜を経て、2023年11月4日(土)。7時過ぎに宿を出て梅田まで歩いて、阪急で嵐山駅へ。大覚寺へ向かいます。

渡月橋

梅田から嵐山まではだいたい1時間くらい。でも阪急の嵐山駅から大覚寺までは30分くらい歩きます。愚か。でもまあ、天気も良かったし久々に渡月橋を渡ったし、良いってことで。

大覚寺

朝9時台にしてすでに8000歩歩いて、大覚寺に到着。

大覚寺に伝わる稀少の逸品〜悠久の歴史、継承される想い〜

大覚寺

大覚寺では現在、「大覚寺に伝わる稀少の逸品〜悠久の歴史、継承される想い〜」と題した展示を霊宝館(宝物館)内で開催中。なお展示を見るためにはお堂の拝観料も必要ですので、お堂(500円)+霊宝館(300円)で最低800円かかります。お庭(大沢池)も別途500円かかりますが、こちらはスルーが可能です。

太刀 銘「□忠」 薄緑(膝丸)

今回の展示ではすぐ近くに押し形(刀の刃文や肌の様子などを描いたもの)が展示されているため、見比べて鑑賞することができます。映りなど「ここにあれがあるはず……」と照らし合わせるように探せたので、見つけやすかったです。そしてちゃんと見つけられる展示環境でもありました(がっつりしゃがむと肌がよくわかります!)。

ノート 薄緑(膝丸)

今回、初めて気づいたのは水影(手元から斜めに入る白い影)があること。これも押し形があるから見つけることができました。膝丸、そんなのあったんだなあ。

一方で帽子(きっさきの刃文)は、押し形で見るよりももっとギリギリを攻めてる、刀身の縁ギリギリに感じるなあと思ったり。最初っからあんなギリギリで刃を焼いてもメリットがないだろうし、研ぎ減りで今のような感じになったんだろうなあと思う。

となると何らかの形で使われる機会があったのか、あるいは単に生きてきた時間が長い分研がれた回数が多いのか。……でも、肌や刃がとっても綺麗なんだよなあ。シルクがつやつや光る、それに似たような綺麗さがある。きっさきの様子に反して「歴戦の」って感じがあんまりしないのが、ふしぎ。そんなことを思いました。

大覚寺

もうひとつ面白かったのが、室町時代の無銘の太刀。この刀の説明として
・肌がギラつき、刃文も焼き落とし風になるなど再刃の可能性が高い
・刀身半ばから物打ちにかけて鎬地に盛んに撓えが発生している
→実戦で使われた可能性が高い

……ということが書いてあって。

まず「『撓え』って何!?」ってとこからだったんですけど、撓う(しなう)が「弾力があって折れずに曲がること」だから、曲がった跡があるってことかな……と観察してみて。鎬に線みたいなものがちょいちょいあるなと思ったので、それのことかなと当たりをつけてみたり。

まあまあ長いこと刀を見てますが、いまだにわからない言葉が出てきますね。面白かったです。

大覚寺

霊宝館を後にして大沢池の方にまわって……

大覚寺

一番ええとこに置いてもろてる男を見てきて。

大覚寺

11時くらいに大覚寺を後にしました。滞在時間は1時間くらいですが、お庭の方にはまわっていないので参考までに(余談ですが、大覚寺めっちゃカメムシいたので踏み潰さないように気をつけてください)。

重要文化財「太刀/薄緑(膝丸)」今秋公開決定!! | 大覚寺

北野天満宮近くのカフェへ

このあとは嵯峨嵐山に移動。そこから3駅、円町まで電車に乗ります。20分くらい歩くことになるんだけど、円町からも北野天満宮に行けるんだよね。乗り換えがないぶん、場合によっては時間短縮になるかと思います。

だけどお昼前でちょっとお腹が空いたので、途中でカフェによりみち。前日にGoogle mapで見てたんですけど、このあたり結構良さそうな飲食店が色々あるんですよね。

and C cocktail & clothing

今回訪問したのはand C cocktail & clothingというお店。通りに面したお店というわけではなくて、通りに面した建物の、ちょっと奥の方に入ったところにあるテナント。

and C cocktail & clothing

こ、ここ……?とちょっとドギマギしちゃうような通路を通って、

and C cocktail & clothing

クリーンな雰囲気の小さなお店へ。同じ店内で古着も販売しており、入店すると「カフェ利用ですか?」と確認していただけました。

and C cocktail & clothing

and C cocktail & clothing

ラベンダーのチーズケーキと、ケーキセットでモヒート(ノンアル)をセレクト。ドリンクはいずれも「お菓子との相性」がメニューに書いてあって、その中でもこのチーズケーキと相性の良いものを選びました。いいねえ、細やかだねえ。

ラベンダーのチーズケーキは単に「それっぽい映えケーキ」ってわけじゃなくて、本当にほんわりとラベンダーの香りがする。でも一気に食べちゃうとだんだん舌が味に慣れちゃって香りを感じられなくなるので、それをモヒートでリセットする感じ。確かに相性良いなあ……と感心しながら食べました。わたし、シソとかミョウガとかセロリとか香りの強い草が好きなんで、まあ好きですよね、こういうの。

ここから北野天満宮までは徒歩8分。テイクアウトの焼き菓子などもありました。他のメニューもほんと目に楽しいものばかりで……とても小さくひっそりとしている、穴場的な店。また別のメニューも頼みにきたいな。

and C 公式サイト

北野天満宮

北野天満宮

さて、ようやくの北野天満宮。正午を少し過ぎたくらいの到着でした。

現在北野天満宮では「KYOTO NIPPON FESTIVAL」というイベントを開催。そのコンテンツのひとつとして宝物殿での刀剣展示が行われています。いつもは宝物殿で直接入館料を払うけど、今回は別に設けられたテントで当日券を購入する方式(境内の裏の方から入ってきたので、テントに気づかないで宝物殿に向かっちゃった人)。

宝物殿の入館料は1600円。刀剣乱舞コラボのボイスが聞けるスタンプラリーは別途料金がかかりますので、公式サイトでご確認ください。

さて、もう何度目かわからない北野天満宮宝物殿ですが……今回はなんか、いつもと雰囲気が違います!

北野天満宮宝物殿

照明がいつもより落とし気味、ライトの色味もブルー寄り。なんか、全体的にスタイリッシュに見える。

短刀 銘大慶直胤(花押)彫よしたね 弘化七半仲春上旬 北野天満宮

とにかく可愛い直胤(短刀 銘大慶直胤(花押)彫よしたね 弘化七半仲春上旬)。

はばき 短刀 銘大慶直胤(花押)彫よしたね 弘化七半仲春上旬 北野天満宮

かわいい。そしてスタイリッシュ。

そんな展示環境でお目見えする、鬼切丸 別名 髭切です。

太刀 銘 安綱 号 鬼切丸 別名 髭切

姿 太刀 銘安綱 号鬼切丸 別名髭切 北野天満宮

今回、「え、デカ」と思っちゃった。髭切にデカいと思ったのは初めてです。何が違ってそう思ったんだろう……

反り 太刀 銘安綱 号鬼切丸 別名髭切 北野天満宮

バナナカーブも、昔は「すっごいカーブ!」って思ったんですよね。でもなんだか、今はそう思わない(前見た時も「思ったよりカーブしてない……?」と薄々思ってたんだけど、今回ようやく自分の認識の変化を認めた)。数を見るようになった分ほかのサンプルを知って比較の仕方が変わったのか、それとも初心者としての新鮮な感情が消えたのか……このふたつは表裏だとも思うけれど……

ものうち 太刀 銘安綱 号鬼切丸 別名髭切 北野天満宮

例年通り「スマホでの撮影はOK、カメラはNG」なので微細なところを撮るのは諦めてるんですが、それでもまあ、刃文のほわっとした感じは少しだけ撮れたかな(撮った本人にしかわからないレベルかもだけど)。

でもいつまでも「兄者ってほわほわしてよくわかんないな」って感想は共通です。そういえば最初に薄緑と鬼切丸を並んで見た時、どちらかといえば鬼切丸が好きと思ったんだけど、今回は薄緑に軍配が上がった。な、何でだ〜!!!自分の感覚の変化が一番の謎!!!

太刀 銘安綱 号鬼切丸 別名髭切 北野天満宮

刀を見るとき、刀を通じて己自身を見ているのです。これだから刀剣鑑賞は、果てのないものだわね。

太刀 銘 恒次

太刀 銘恒次 北野天満宮

今回は前田家奉納の刀がずらっと並ぶ展示でもありました。こちらは5代綱紀が奉納したひとふり。はばきに前田家の梅鉢紋が入っていますが、梅はお天神さまの紋でもあります。前田家は菅原道真を祖としていたため、紋も梅だし、北野天満宮にも折々につけ奉納を行っていたんですね。

で、恒次。数珠丸恒次と同じ、恒次の作です。ちょうど昨日数珠丸を見たところですので、答え合わせをするような気持ちで観察したんですが……

肌 太刀 銘恒次 北野天満宮

う〜ん、肌のほわほわ白い感じは共通するかも?でも肌のきめ細かさ自体は数珠丸の方が上だった気がする。

わたし、青江は好きなんだけど、「青江だ〜!」と思って青江派の誰なのかあまり区別がつかずに見てたんですよね。これまでは恒次、ちゃんと区別して見ていこう、と思う……

秀頼様の国広は?

と、それなりに混雑した展示室内をぐるぐるまわってみたのですが、「あれ?今回って髭切と前田奉納刀をフューチャーする感じ?秀頼様の国広は出ない?」とキョロキョロしてしまいました。

北野天満宮は豊臣秀頼(豊臣秀吉と淀の子、鯰尾藤四郎などの元の持ち主)によってたくさん援助してもらっていて、現在の本殿も秀頼によって造営されたものです。その本殿造営時、秀頼様が奉納した国広作の太刀があるんですけど……見当たらなくて……

「今回は出てないのかな……」と思って、最後に混んでて見損ねてた入り口真ん前の刀を見に行ったら、

太刀 銘 北野天満天神豊臣秀頼公御造営之時干時慶長十二丁未十一月日信濃守國広造 北野天満宮

こ、これじゃ〜ん!!!

まさかの玄関ど真ん前、しかもゴールドの敷き布での展示。今回の展示品は基本ブルーの敷き布で統一されてて、鬼切丸(髭切)だけ「源氏の色」である白の敷き布だったんですよね。

「あっなんか……豊臣ゴールド……あっなんかあの、ありがとうございます、髭切ばりに特別扱いしてもらって……はい……」みたいな気分になりました。ありがとうございます(わたしは鯰尾藤四郎が好きです)。

撮影NG品ですが、他にも秀頼ゆかりの品が展示されています。北野天満宮の歴史に確実に関わった豊臣の存在にも、ほんのり興味を向けていただけると幸いです(わたしは鯰尾藤四郎が好きです)。

北野天満宮

展示を見終わったのは13時ごろ。もうちょっと色づいてればもみじ苑を見ても良かったんだけど、まだ色浅しなようなので今回はスルーしました。もみじ苑やスタンプラリーを含めるともっと時間がかかるかと思いますが、ひとまずご参考まで。

そんな大覚寺と北野天満宮をはしごした半日のログでした。

旅の情報まとめ

北野天満宮・鬼切丸(髭切)の展示は12月3日(日)まで。ただし11月11日からの後期期間では開催時間が9:00~20:00(最終受付19:30)となるので、遅めの時間を狙うのも手だと思います(前期中は9:00~16:30)。

大覚寺・薄緑(膝丸)の展示は北野天満宮より1日長い、12月4日(月)まで。こちらは全期間共通で9:00〜17:00(16:30受付終了)です。

これから紅葉も深くなってくるので観光客もえらいことになりそうですが、大覚寺は比較的ゆったり見られたかなと感じます。北野天満宮はやっぱり知名度も高いし、どうしても混んじゃうかな。公式情報やお天気、自分の体力などなど勘案して旅を楽しんでいただければです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

KYOTO NIPPON FESTIVAL 公式サイト

この後は夜の高台院で刀を見たよ▼