靖国神社 遊就館

靖国神社 遊就館で刀を見てきた/東京・九段下

2024年3月29日、靖国神社の標本木で開花を認めた、と言うニュースを見ました。

東京・靖国神社で桜の開花宣言 平年より5日遅く | みんなの経済新聞

週末どこ行こう?と思ってたけど、これを聞いて、靖国神社に行くことにしました。上京して10年余り、なんだかんだ言っていまだに靖国神社に行ったことがなかったので。

3月30日、最高気温23度

靖国神社

靖国神社は半蔵門線の九段下駅を出てすぐのところにある神社。ご存知の通り、幕末以降の日本の戦乱で死んだ軍人を英霊として祀っている神社です。それが、戦争賛美のようで、いずれ行かなきゃ(どういうものであれ一度は見なきゃ)とは思いつつなかなか足が向かなかった。

靖国神社

ニュースで映るのは本殿に(総理とかが)上がっていく様子ばかりだから、境内がこんな感じだって知らなかったなあ。大きい売店があるし、今は桜のお祭りということで屋台も色々出ていました。

靖国神社 大島桜

ニュースでは標本木の開花が見られたとのことだったけど、桜自体はまだ「ちらほら」程度。これは一足早く咲いていた大島桜。

靖国神社 桜

この日の東京は最高気温23度。じっとしてるなら肌寒いけど、お散歩するならTシャツでちょうどいい、くらいの気温です。この調子じゃあ午後になったらもっと桜が咲いてるんじゃないかな……って思っちゃうくらいの、いきなりの春。

靖国神社

境内には外国からのお客さんをはじめ、ハトバスなどの観光バスも乗り入れていました。どうにもわたし、ここでニコニコして記念写真を撮るような気になれない。わたしが考えすぎなのかなとも思うけど。

お参りを終えてから、靖国神社の宝物館である「遊就館」へ向かいます。

遊就館

靖国神社 遊就館

明治15年(1882)に「御祭神の遺徳を尊び、また古来の武具などを展示する施設」として開館した遊就館。ちなみにこの名前は宮内大臣 田中光顕(鶯丸を天皇に献上した人)が決定しています。

参考:遊就館の歴史

靖国神社 遊就館

1階のロビー部分は無料での見学・写真撮影が可能。また売店や喫茶も併設しており、喫茶では海軍カレーなどが食べられるんですが、桜の陽気に誘われて満員御礼状態でしたので今回は諦めました。

2階からは有料エリア。常設の展示には刀剣類も含まれています。

刀剣類、約12振り

とりあえず公式サイトの「展示室のご案内」を見ていただきたいんですが、「展示室1 武人のこころ」「展示室2 日本の武の歴史」の2部屋に、12振りくらいの刀剣類が展示されています。そのほかの部屋でも、拵がつけられていて刀身が見えないものもありますが、軍刀などがちょいちょい展示されています。

わたしが見に行った時の上記2部屋の展示品は以下の通り。

元帥刀
笠間繁継による太刀で、小烏丸造り。元帥刀は天皇が元帥に下賜するもので、「展示室1 武人のこころ」のど真ん中に独立ケースで展示されています。刀身に金の菊が埋め込まれてた。

七星剣 吉原義人
太刀 月山貞一 小烏丸造り
「展示室2 日本の武の歴史」では、古代から近代へと、甲冑などとともに時代ごとの武具が紹介されています。この2振りは制作年代こそ新しいものですが、古代の刀のサンプルとしての展示となっていました。そのほか製作者はわかりませんでしたが明治時代の毛抜形太刀もあります。

短刀 宇多国久
展示品のうち一番印象的な刀はこれでした。刀身にふとぶとと「摩利支天」と浮き彫りされてる。

大太刀 正家
古三原(広島のあたり)のものとのこと。しっかりデカかった。

槍 水心子正次
長巻 九州筑前住人源信国平四郎

この2つは上の方に展示されてたので細かいところはよく見えないやつ。これも薙刀じゃなくて長巻扱いなんだな……?となった。槍は幕末、長巻は室町時代のもの。

刀 眠龍子壽實
脇差 源清麿

清麿あるよ!!!両方とも江戸後期〜幕末らへんで、刃文が華やかなもの。

太刀 因州住景長
室町時代の作で、岩崎弥之助(三菱の創始者・岩崎弥太郎の弟)から奉納されたもの。2021年の「三菱の至宝展」では「弥之助は下級武士の家に生まれたこともあり、武家文化への憧れが強かったらしく、彼の文化財のコレクションは刀剣からスタートしています」と説明されていました。

もし奉納されてなかったら今ごろ静嘉堂にあったのかなあ、などと思う。

太刀 国継
古備前で、鎌倉時代初期の作。奉納した人は「上品なれば遊就館へ、悪くとも2、30人は切れるから(良い品だと判断してもらえたなら遊就館に納めていただいて、そうでなかったとしても2、30人切れるくらいの刀だから)お役に立ててほしい」と奉納したとのこと。普通に「2、30人は切れる」と言ってしまえる、その時代性に少しゾッとしてしまう。

靖国神社 遊就館

全体として刀剣鑑賞特化な展示環境ではない(刃文など見えないことはないけど、見ようと思わないとあんまり見えない)という感じ。また全体的にお客さんが多いので、ちゃんとじっくり見ようと思うならうまいこと人の流れをいなす必要があるかなと思います。

またパンフレットには今回展示されていなかった「包丁正宗」も掲載されていたので、もしかしたらちょいちょい展示替えがあるのかもしれないです。基本的に年中無休の施設だから「刀見るつもりで東京来たけど休館日だった〜!!!」って時の救済におあつらえ向きな気がします。

戦争の歴史を、どのように見るか

最初に「戦争賛美のようで、いずれ行かなきゃ(どういうものであれ一度は見なきゃ)とは思いつつなかなか足が向かなかった」と書きました。そういう気持ちの持ちようの人間なので、この展示施設を見るのにはなかなかエネルギーが必要でした。

日清戦争、日露戦争、第二次世界大戦。例えば沖縄の施設だと「戦争の悲惨さ」をよくよく伝えているけれど、この施設はそこまでではありません。日本の勝利が世界中でどのように取り上げられたか、といったパネルもありますし、「壮絶な戦死は後に続く人々の士気を上げた」のような言い回しをする箇所もあります。正直言って「もっとちゃんと否定してよ!」って思ってしまう。死を綺麗なものにしないで。

靖国神社 遊就館

でも展示の終盤、終戦の頃になってくると、戦地に行く兵士の遺書なんかも展示されていきます。偉い人じゃなくて、たぶんその辺の人たち(言い方があれですが)。たくさんの兵士の遺書、遺品、遺影、がずらずらと展示される。そこをどういう気持ちで見るのかは……たぶん見る側の気の持ちよう次第なんだろうな。ことさらに「戦争が悲惨なもの」という語りをしているわけではありません。そういうアンテナを持って見ている人にはそう見える。一方でミリタリー好きだったり、この時代の歴史が好きな人にとっては、ここにあるものは興奮する資料なのでしょう。だからまあ、フェアといえばフェアな展示なのかもしれない。広島や沖縄が「悲哀」に迫りすぎている、と見るならば。

「そういうのはさあ、否定の前提で語らなきゃダメでしょ、そうじゃなきゃダメでしょ、人間として……」と思っている人間には、ちょっと見るのがしんどい施設かなと思います。自分の核、魂のようなものにざらざらと紙やすりをかけながら見ているような感じだった。一方で「でもそれって、刀という武器に美を見出す矛盾とはどう落とし前をつけるんだろう、どちらも等しく人を殺すものなのに、それって、それって……」というようなことを考えてしまったり。肌に紙やすりをかけて、血が滲んでくるようだ。

靖国神社の歴史は幕末から

……と、ここまで戦争に関するあれこれを綴ってきましたが、靖国神社に祀られているのは戦時中の兵士だけではありません。幕末、大きく国が動く中で死んでいった人々も祀られています。

>明治天皇は明治2年6月、国家のために一命を捧げられたこれらの人々の名を後世に伝え、その御霊を慰めるために、東京九段のこの地に「招魂社しょうこんしゃ」を創建されたのです。
この招魂社が今日の靖國神社の前身で、明治12年(1879)6月4日には社号が「靖國神社」と改められ別格官幣社に列せられました。

引用:靖国神社の由緒

なんかそう思うと、ちょっと気持ちが楽というか……坂本龍馬や高杉晋作や吉田松陰のお墓参りをしていると思えば、「英霊」という言葉に対する置き場のなさ(死んでいった人々は気の毒に思うけど、この人たちの死に様を肯定することが戦争賛美と取られるなら迂闊にできない、だって単純な暴力に訴えた時点でそれはもう間違いじゃん、って気持ち)がちょっと薄れます。まあ幕末の人々は単に時代が遠くて生々しさが薄れてるってだけなのかもしれないけど……(そしてそういう感覚になる自分にバカなんじゃないの?って気持ちにもなる……)

何が言いたいかっていうと、「刀は見たい、でも靖国神社に行くということ自体にちょっと葛藤がある」という人は「幕末の人々のお墓参り」の気持ちでいくとちょっと自分を納得させられるかもしれない、って話でした。

かつて御物が展示された「特別陳列室」

靖国神社 遊就館

もうひとつ、「特別陳列室」をご紹介しておきます。展示の中盤には「特別陳列室」という一室があって、ここは「昭和7年(1932)に復興再建してから終戦までの間、宮内庁御貸下げの御物や各地の国宝刀剣などが陳列された」という場所。現在は皇室ゆかりの戦争関連の品々が展示されています。

わたしの知ってるものだと、岡田以蔵の肥前忠広……と伝わる刀(部分)がかつて遊就館で展示されています。展示年までメモしてなかったからなんとも言えないけど、もしかしたらこの部屋で展示されたのかな。

詳しく調べないとわからないけど、御物刀剣などもこの部屋で展示されたのかもしれない、と思うとちょっとよかったです。天井のステンドグラスが素敵な部屋でした。

いつでも刀が見れる場所

靖国神社 遊就館

という、遊就館でした。なんだか読んでるのが辛くて読み飛ばしたところも多かったけど、それでも所要時間は2時間ほど。

確かまだ実家にいた頃、高校生の頃だったと思うけど、テレビか何かで靖国神社が映った時に「一度は行っておくといいよ」と父に言われていました。やっと行けて、なにはともあれ良かったなと思います。

千代田区立九段中等学校

このあとは靖国神社のすぐ近くにある「琉球のかつての王様、尚家邸宅があった場所」を見に行きました。それはまた別の記事にて。

ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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