磐田市 香りの博物館 家康の遺香展

磐田の「成高」を見てきた!磐田市香りの博物館 2023年6月25日まで

ブログやっててよかったなって思いました。

このブログには簡素なアクセス解析ツールがついてるんですが、6月16日に「日本刀 銘成高 静岡県指定文化財」の検索ワードでの流入があったんです。ふ〜んと思ってそのワードでの検索結果画面を見てみると、これが出てきた。

磐田の成高、出てんの!??!?!?

気が動転しちゃったよ。

わたし、地元がこの辺りで、地元の名刀いつか見たいなってずっと思ってたんです。それこそ刀の勉強し始めた頃にこの刀の存在を知ったので、かれこれ8〜9年くらい。他の成高が出ることはあっても、磐田の成高はなかなか展示される機会がなくって。

↑の記事では過去に見た4振りの成高をまとめています。

それがね、めちゃめちゃ期間タイトだけど展示されてる!!って分かったので、もう休みをねじ込んでしまいました。いくわよ、磐田!

豊田町駅、10:15着

豊田町駅

展示会場となる「磐田市香りの博物館」の最寄りはJR東海道線の豊田町駅。豊田じゃないよ、豊田町だよ。今はまるっと磐田市だけど、合併前は豊田町で独立してたんだよね。

豊田町駅

駅構内の掲示板にも今回の展示のチラシが貼られています。

豊田町駅

うん、草の根的な努力は感じる。

豊田町駅

香りの博物館までは、駅前をまっすぐ歩いて4分ほどで到着です。

磐田市 香りの博物館

磐田市 香りの博物館

磐田市 香りの博物館は、全国的にも珍しい「香り」をテーマにした博物館。小さいけどかわいい建物で、わたしも小学生の頃何度か連れてきてもらったことがあります。

磐田市 香りの博物館

そうそう、このステンドグラスが素敵なんだった。

磐田市 香りの博物館

磐田市 香りの博物館

ラリックとかの香水瓶や、香りの源流・エジプトやメソポタミアとか、そういうところをイメージさせるような建物デザイン。また豊田町には「熊野(ゆや)の長藤」という藤の名所があるため、藤のモチーフも随所に使われています。

熊野の長藤

熊野の長藤

磐田市 香りの博物館

家康の遺香 徳川と磐田 天下人の愛した香り

磐田市 香りの博物館

今回の展示タイトルは「家康の遺香 徳川と磐田 天下人の愛した香り」。大河ドラマに合わせて全国各地で家康関連の展示が行われていますが、ここでは「香りの博物館」らしく香りにフォーカスした展示。さらに磐田市内に残る伝承や、家康ゆかりの品を紹介しています。

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 お香マニア

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 香り体験

「家康はお香マニアだった!」とか、この館ならではの切り口だよね。

家康敗走伝説の宝庫、遠州

ここで、この展示が行われている「磐田市」の位置を確認しましょう。

しぞ〜かなんとなく刀剣MAP

こちらは以前作成した、静岡県内の刀剣関係をマッピングした画像(2022浜松の刀剣展に合わせたものなので現在の情報じゃないよ!)。磐田は静岡県の中でも愛知寄りの地域で、天竜川を挟んで浜松のお隣、といった位置。

で、画像の右上の方には山梨があり、武田軍はそっちから攻めてきます。

家康の人生でも最大級の負け戦であった「三方原の戦い」は浜松ですが、武田軍から敗走して浜松に戻っていく、その直前にある町が「磐田」ということになります。

という位置関係もあって、家康の敗走エピがめちゃめちゃある地域なんです。

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 敗走伝説

今回の展示では「どうする」に合わせて敗走エピを紹介するパネルも展示されています。知ってるものも多かったけど、「それも家康関係だったの!?」ってのもある。

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 粟餅

粟餅、お前、そういういわれだったんか。

メインビジュアルには酒井忠次がど〜んと描かれていますが、

磐田市 香りの博物館

今回はこの、酒井の太鼓も出張してきてるよ!出張っつっても同じ市内からだから車で10分かそこらの出張だけど。

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 伝酒井の太鼓

伝・酒井の太鼓。家康の家臣・酒井忠次が三方原の戦いのあと、城に戻ってくる兵士たちのためにこれを打ち鳴らした(武田は「なんでこんな派手なことするんだ?なんか策略があるんか??」ってビビって動かなかった)という伝説があります。現在は磐田市内の旧見付学校の所蔵。

とはいえあくまで「伝説」で、史実としての信憑性は薄いやつなのかな……と思ってたんですが、今回この太鼓の革張り替えに関する年表が展示されていました。

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 酒井の太鼓年表

これによると、少なくとも1758年にはあったらしい。おお、意外に由緒がある(といっても三方原の戦いからあったかっていうとわかんないけど)。

そんな中、今回のお目当てである「太刀 銘成高」もまた家康敗走エピのひとつです。

太刀 銘成高

「家康の遺香」の期間は4月22日〜6月25日ですが、そのうちの6月6日〜25日の期間のみ太刀 銘成高が展示されます。

※成高のある一角は撮影禁止でした。

見付宿(磐田市にある宿場町)の上村清兵衛は酒を作っており、特に冷酒がご自慢。ある時領主の徳川家康が見付を訪れた時に、清兵衛が冷酒を勧めたところ、家康はこれを気に入り、清兵衛を『冷酒清兵衛』と呼ぶようになりました。

さて元亀元年(1570)、武田軍から敗走し、見付宿に辿り着いた家康。命からがら逃げてきた家康に、日頃お世話になってる冷酒清兵衛が一肌脱ぎます。

なんと見付宿に火を放っちゃった。

町が火の海になったことで武田軍は足止めされ、家康軍は逃げ延びることに成功。このお礼として下賜されたのが成高の太刀で、現在まで磐田市に伝わっています。家康は頼朝を意識した行動をたびたび行っており、これも頼朝リスペクトかと推察されるところです。

中遠むかしばなし
市の文化財ページ

「三河物語」「浜松御在城記」などではこの時火を放ったのは「徳川軍」とされていますが、「見付町田畑納由緒書上控」「静岡縣磐田郡誌」では見付宿の住民(清兵衛)と書かれており、2説あることになります。とはいえ貴重な成高の太刀が伝わっている以上、後者の方が信憑性が高いのではないでしょうか。

いわた文化財だより第109号(平成26年4月発行)
いわた文化財だより第109号(平成26年4月発行)

実物を見るのは今回が初めてなんですが、目釘穴ひとつの初(うぶ)なかご、非常に「手垢のついていない」といった風体の刀です。秘蔵されていたのだろうなと感じる。とても綺麗ですし、キャプションでも「保存状態が良く、貴重」という点が強調されています。

そして、この展示環境でよくここまで!とも思います。だって展示情報を知った時「香りの博物館で展示するとは思わんかったよ!?!?」って思ったもん。本来刀を展示する場所ではないし、刀を展示するのも、もしかしたら初めてなんじゃないでしょうか。立った状態で肌が良く見え、しゃがめば刃文もちゃんと見えるというしっかりした展示をしてくださってます。

成高の解説パネルは3枚くらいあるし、加えて「日本刀の鑑賞のための基本」みたいな図解のパネルも出ています。これは藤枝市郷土館・文学館のクレジットがついていたので、もしかしたらその時の展示に携わった方がこの展示にも関わっているのかもしれません。地域の連携を感じる。

また、もうひとつの見どころが研ぎ!大正〜明治初期に活躍した名人研ぎ師・平井千葉が、もともとこの刀の研ぎを担っていました。

本阿弥家に学んだ平井は従来の本阿弥流の研ぎに工夫を重ね、地鉄の働きを引き出し、黒く深みのある拭い、刃はあくまで白く、ふくよかに仕上げる「平井研ぎ」を編み出し、存命の頃から高く評価されていたとか。

この刀にも昭和初期に研ぎを施していましたが、近年また研ぎが必要となった際、これを全て研ぎ直してしまうのは惜しいとのことで、平井の研ぎを一部分残しています。

見たらわかるくらいの色の違いがあったので、ぜひ注目してみてください!でもしのぎより上は違いがわかったけど、刃文とかしのぎより下とかはあまり区別がつかなかったな。もっと角度をつけて見たら違ったんだろうか……

本当に、「変なところ、気になるところ」が全然ない刀でした。これが自分の地元を代表する名刀だと思うと、嬉しいな。特に手元近くの、金筋とか砂流しとか呼ばれるような、ゆらめく刃文の様子が好きでした。

磐田市 香りの博物館

ミュージアムショップは香りものがいっぱい!マスクスプレーにもできるフレグランスミストで好きな香りがあったので、買って帰りました。

家康の遺香展は6月25日まで。所要時間はざっくり1時間程度でした。成高が見られる貴重な機会ですので、都合があえばぜひ足をお運びください。

展覧会チラシPDF
公式サイト

一言坂まで歩いてみる

一言坂

香りの博物館から本多忠勝の無双で有名な「一言坂の戦い」の跡地までは徒歩30分ほどの距離。近い……とはいえないけど、こういう機会でもないとなかなか行かないので、歩いて行ってみました。

一言坂

農地を通り抜けて、車ビュンビュンの幹線道路へ。ここって距離的には実家からそう遠くないんだけど、坂を上がって降りる場所だから、行きも帰りもしんどくてなかなか行こうってならないんだよな。行った先に何か遊べるところがあるわけでもなかったし、かといって大人になってから帰省のタイミングで行くには、車を出してもらわないと微妙な距離だし。

一言坂

という、一言坂の戦跡です。横の道路は(車で)ビュンビュン通ってたけど、石碑の前にちゃんと立つのは初めて。

一言坂

ここも博物館のパートでお話ししたように、武田軍からの敗走エピのひとつ。家康の家臣・本多忠勝が大いに活躍した場所として知られます。

一言坂

この石碑は道路沿いにあるんですが、ちょっと奥まったとこにももう一個看板がある。

一言坂

これが奥まったところにある看板。こっちの方が詳細なんじゃないかな。

一言坂

「平八郎は『とんぼ切り』といわれた大槍を振り回しながら一人奮戦し、枯れ草に火をかけ、その煙の中、見事に味方の軍を退却させたと伝えられています。
敵の武田軍も、この時の武勇をたたえ、『家康に過ぎたるものがふたつある、唐の頭(兜)に本多平八』と書いた札を磐田市国府台に立てたといわれています」

……ということで、蜻蛉切大活躍の場でもあるわけです。

一言坂

この絵も香りの博物館で展示されていました。現物だったか複製だったか見るの忘れちゃったけど……

このあとは、ここから豊田町まで戻るのもしゃらくさいし磐田駅まで歩いて、東京へと帰りました。「いっぱい食べちゃった日は一駅余分に歩いてカロリー消費🤍」をど田舎でやるな。

家康敗走エピの町、磐田

磐田市 香りの博物館 家康の遺香展 しっぺいちゃん

そんな磐田での1日でした!歩いて回ろうと思うと過酷ではあるんですが、家康関連の史跡があらゆる場所に(マジあらゆる場所に!)あるほか、ゆるキャンにも登場した見付天神なんかもあります。ジュビロは最近弱いけど頑張ってます。そして成高もあります!

今回の展示に合わせ、また別の機会にでも磐田に来ることがあれば、楽しんでいただけると幸いです。ここまで読んでいただいてありがとうございました!

この記事、更新しなきゃだな〜(嬉しい)