山形旅

山形の歴史を巡る旅 最上家から上杉家まで【旅する審神者番外編】

ゲストライターとしてお招きした宝生かなで。(@virtu3220kmodoa)様が、山形の旅をお寄せくださいました!

宝生さんは以前にこのブログについて、とっても心のこもったお便りをくださった方。ご自身もTwitter #かなでの刀剣旅行記のタグにて旅の様子を掲載していらっしゃいます。今回はゲストライター募集の記事に手をあげていただき、米沢を中心とした山形の旅行記をお寄せくださいました!温泉にメシに展示にと、盛りだくさんだぜ。

それではいつもと違う「旅する審神者」、お楽しみください。

山形歴史旅

旅に出ること。
それは、かつての私にとって、決して身近なことではありませんでした。
お金がかかるから。誘う相手がいないから。
そんなふうに理由をつけて、旅行を後回しにして来たように思います。
しかし刀剣乱舞に出会い、刀を見に行く趣味を持ったことで、私の世界は変わりました。

長船、三島、島原、結城、笠舞……。
審神者にならなければ、きっと一生足を運ばなかったであろう見知らぬ土地が、いつしか私にとって、深い思い出の場所となりました。

思い立ったらふらりと旅に出ること。
ひとりでも、時間がなくても、旅に出ること。
未知の土地に行き、新しい景色に触れること。
それらを後押ししてくれたのは、間違いなく刀剣乱舞の存在でした。

今回は姫鶴一文字の展示に合わせ、晩春の山形を旅してきました。

山形市内でフレンチを堪能

山形ははじめて訪れる土地。「山形を存分に味わいたい、米沢に直行するだけでは勿体ない」と思い、山形市内に1泊前乗りすることにしました。

当日は新幹線で山形駅に到着。荷物を置いて、真っ先に向かった場所が「レストラン パ・マル」さん。

Pas Mal

山形の食材をふんだんに使ったフレンチの名店で、ミシュランと並ぶ食通ガイドブック「ゴ・エ・ミヨ」2023年版で3トックを獲得しているお店です。今回は6600円のランチコースを頂きました(以下、少し食レポにお付き合いください)。

コースは春らしい冷製スープから。ほたるいかとそら豆、新玉ねぎのスープ。添えられたコンソメのジュレは、3日間かけて煮出したものだそうです。

Pas Mal スープ

次は山形産アスパラのマルテーズソース。オレンジのすっきりした酸味がアスパラとよく合っていました。

Pas Mal 前菜

お魚は、鰆のソテー、焦がしバターとアンチョビのソース。ぱりぱりの皮と、添えられた山菜のフリットが絶品でした。

Pas Mal 魚

メインのお肉は庄内産の鴨にふきのとうのソース。シェフがテーブルを回って、熱々のソースをかけに来てくれます。付け合わせの野菜は、ひとつひとつの焼き加減が絶妙です。

Pas Mal メイン

そして最も印象的だったのがこちらのデザート。唇の形に盛り付けられたフランボワーズのムース、その名も「Kiss」。お店のトレードマークになるような料理として考案されたそうです。

Pas Mal デザート

最後にミニャルディーズのカヌレとほうじ茶プリンを頂いてコースは終了。手作りのカヌレまで妥協のない美味しさです。

Pas Mal お茶菓子

フランス料理と言うと、どうしてもこってりしたソースのイメージが強いですが、素材の味を活かしたとても繊細なお料理でした。

このお店の嬉しいポイントは、1人客も歓迎し、お皿を下げるときなどにさりげなく話しかけて下さること。実際、評判を聞きつけて1人で来店するお客さんも多いそうです。

終始居心地の良い空間で、山形を訪れた時には再訪したいと思えるお店。ごちそうさまでした。この後はぶらぶらと市内を歩き、「最上義光歴史館」に向かいます。

最上義光歴史館

最上義光歴史館

この地を治めていた戦国大名・最上義光ゆかりの品を所蔵する博物館。今回は企画展「鐵の美 ~戦国武将の刀、最上家ゆかりの刀~」の真っ最中。常設コーナーに加え、企画展で10振りの刀を鑑賞することが出来ます。

公式サイト

入館は無料。タイミングが良ければボランティアガイドさんが展示の解説をしてくださいます。印象に残ったのは、

刀 銘 備前国守光
短刀 銘 行平

の2振り。いずれも、最上義光の死に際し、殉死した長岡光広という家臣の刀です。四百年に亘り長岡家に伝来し、今回の企画ではじめて一般公開されたとのことでした。
刀を見ると、その刀の背景にある「物語」に真っ先に思いを馳せてしまうのが審神者の性。
ご子孫の方々は、どんな思いで先祖の死を語り伝え、この刀を受け継いで来られたのか……と考えずにはいられませんでした。

奥の展示フロアにも企画展とは別の刀剣コーナーがあり、「綾杉肌」で知られる山形発祥の刀派・月山派を紹介する特集が組まれています。
展示されていたのはいずれも赤羽刀。GHQに接収された後、戻って来なかった作品も相当数あるようで、改めて展示されている作品が、今ここに在る奇跡を噛みしめました。

刀にまつわる展示は、これだけではありません。
同じフロアの最も奥、最上義光が使用した指揮棒の展示の近くにひっそりと、鬼切丸(髭切)の伝来にまつわるパネルが貼られています。髭切といえば源氏の重宝というイメージが強く、最上家に伝来した事実は見落とされてしまいがち。最上義光歴史館さん、もっと宣伝してくれていいんだよ!と思われずにはいられませんでした。

山形城 のぼり

歴史館を出た後は、すぐお隣の山形城へ。城内で目を引いたのは「東北の関ヶ原」と言われる長谷堂合戦に関する展示です。

西軍に与する上杉家と、徳川方の最上家との戦いに、伊達家の援軍も加わった東北の“天下分け目”の戦い。
展示を見ながらはたと気が付いたのが「刀剣乱舞、長谷堂合戦できるのでは?」ということ。

最上家に伝来した経歴を持つ髭切に、上杉や伊達の刀達……刀剣乱舞には、合戦に関わった全ての大名家の刀が揃っていて、三者三様の視点から戦いを描くことが可能です。いっそ、特命調査「慶長出羽」というイベントをやってくれたらいいのに。監査官は直江兼続の愛刀・水神切兼光なんてどうでしょう?

などと、新しいイベントの妄想をしながらお城を楽しんだのでした。

細竹

この日は山形市内で夕食。「花膳」さんで郷土料理をいただきました。山形のソウルフードだという「パインサイダー」や有名な芋煮、そして季節限定のお料理「細竹」の焼き物に舌鼓。

細竹は地元の山で採ったタケノコだそうで、皮を剥き、粗塩や味噌をつけて頂きます。このお味噌が絶品でした。カウンターで他のお客さんと話しながら、山形の夜を存分に愉しみました。

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