永青文庫 揃い踏み細川の名刀たち

スタオベしちゃうぜ、歌仙兼定。「揃い踏み 細川の名刀たち-永青文庫の国宝登場-」見てきた/2023年5月7日まで

永青文庫にてスタートした、「揃い踏み 細川の名刀たち-永青文庫の国宝登場-」を見てきました!

揃い踏み 細川の名刀たち-永青文庫の国宝登場-

永青文庫

細川家の宝物を守り伝えている、東京・目白の永青文庫。歌仙兼定や国宝の豊後国行平(古今伝授の太刀)を所蔵していることでもお馴染みです。

歌仙兼定や古今伝授の太刀は2016年の「歌仙兼定登場」でも同館で展示され、それ以降もよその館(熊本など)での展示はあったものの、所蔵館での展示は久しぶりとなります。

もともと去年(一昨年だったかもしれない)にも展示予定があったのですが、新型コロナウイルス感染対策への対応が大変だということで、お預けになっていました。永青文庫は私立の小さな美術館、しかも最初から美術館として建てられた建物じゃないということもあり、導線などなど課題が多かったとか(いつかのニコ美で橋本麻里氏(永青文庫副館長)が言ってました)。

今回は(日時指定予約が必要なものの、)展示期間が5ヶ月と長く、お客さんが分散することも狙ったんだろうなと思われます。

椿山荘 コラボパネル

長期の展示であることに加え、近隣施設でのスタンプラリーや各種コラボもアリ、ということで、たくさんの人に楽しんでいただけやすい展示なんじゃないかなと思います。今回わたしは土曜の朝イチの回だったんですが、展示室内は結構余裕のある人数具合でした。

ってわけで、展示見てきたよレポです!

展示リスト(PDF)

1 国宝 刀 金象嵌銘 光忠 光徳(花押) 生駒讃岐守所持(生駒光忠)

今回の展示は2部構成。1章が「刀剣」、2章が「肥後金工」…刀の周辺工芸の名品が展示されています。その1章のド頭にお出しされるのが生駒光忠、国宝です。

まあ強いこと強いこと。圧が。もう「完全無欠!」って感じ。光忠らしくとても華やかな、溶けかけた氷みたいなグラデの刃文をしています。そして肌も、デパコスのBAさんに「ファンデもコンシーラーも塗る必要ありませんね」っていわれそうなきめ細やかさ。何?ダメなとこないじゃん完璧すぎてつまんないよ。

そう、こういう刀って「完璧すぎてつまんない」って印象に残らなかったりするんですけど、その点生駒は金象嵌なのが良いんですよね。こういうわかりやすい特徴ってビギナーの時でも印象に残りやすいし、ビギナーの頃に印象が残った刀はきっと永遠に思い出せる。完全無欠の王者、だけど記憶に残ることも忘れない。キングオブキング(ハレルヤ)。

2 重要美術品 刀 金象嵌銘 兼光磨上光徳(花押)

そんなスーパーキング生駒の次に出されちゃうと「渋っ」って思っちゃうんですけど、でもこういう感じが落ち着くんだよな、っていう磨り上げの兼光。

生駒ほどの派手さ・迫力はないし、ちょっとキズがあったり白い霧のような肌だったりするんだけど、でもこういうやつの方が「一発でわかる」ような刀より「何度も見る楽しみがある」だったりする。味わい深い。

この兼光はもともと細川公爵家の家令・津田氏の所蔵品で、「愛刀だから細川家以外には譲りたくない」と話していたもの。死後に細川護立が譲り受けましたが、それに際する書類が3階に展示されています。

4 脇差 銘 備州長船経家 永享九年二月日

永青文庫 揃い踏み 細川の名刀たち 備州長船経家

「あ、いい刃文だな」と思ってメモしながら「あれ、前にもこれ描いた気がする」となった刀。図録を確認したら、2016年の「歌仙兼定登場」で見てました。久しぶりだね。よくもまあ8年越しで覚えてることよ。

6 刀 銘 濃州関住兼定(歌仙兼定)

まあもうコレはもう声を大にして言いたい「スタオベだぜ歌仙兼定」

見た瞬間真っ先に思ったことが「この状態(ライティング)で写真撮りてえ〜!!!!」でした。もう最高よ、めちゃ盛れてる。刃文とか何もしなくても見える。前に立ちゃあ全部見える。約束された勝利。イヨッ日本一!

歌仙兼定 きっさき 熊本県立美術館 雅 細川家の歴史と美

(2022年9月 熊本県立美術館にて撮影)

歌仙兼定の帽子(きっさきのところの刃文)の上品に小丸に返る様子がとても好きなんですが、帽子ってちょっと角度がつく分刃文が見えにくいってことも多いんです(上の写真でもうまく撮れてない)。

今回はもうバチピンですよ。何もかも見える。過去最大級に盛れてる。

そして今回独立ケースですので、裏側も見えるんです。こちらも屈めばある程度刃文を見ることができるんですが、面白いなあと思ったのが表裏の刃文がかなり似せてあることです。

歌仙兼定 腰刃 熊本県立美術館 雅 細川家の歴史と美

(2022年9月 熊本県立美術館にて撮影)

歌仙兼定の好きポイントその2が腰刃。持ち手に近いところでモリっと膨らむ刃文のことをそう呼ぶんですが、コレが朝の稜線を思わせる様子でとても好き。

そして裏側なんですが、

永青文庫 揃い踏み 細川の名刀たち 濃州関住兼定(歌仙兼定)

なんかこう、さすがに全く同じにはなりませんけど、なんとなく要素はおんなじ感じするんですよね。膨らんだところが若干欠けるような感じとか。帽子の小丸の感じはもっと同じです。村正かよ?って思っちゃうくらい(村正は表と裏の刃文が同じになることが特徴)なんだけど、時代としては兼定の方が(結構)前だよね。初代村正が作刀してたころは之定の晩年に当たるはずだし、歌仙は和泉守受領前で早い頃の作なので……

参考:「兼定 刀都・関の名工」岐阜県博物館2018内「関伝中興の祖 和泉守兼定と藤原利隆」篠田幸次「和泉守兼定が、晩年すなわち文亀二年頃より斉藤利隆に従い〜」
名古屋刀剣ワールド 妖刀村正伝説「初代・村正は、1501年(文亀元年)頃の人」

……ってあたりを踏まえると、えーッ面白いね!ってなっちゃうね。8年越しに初めて知ったこと、です。

7 国宝 太刀 銘 豊後国行平作(古今伝授の太刀)

「な、なんか思ってたんと違う!!」ってなった。っていうのも、佐野美術館の行平でなんか「わかった気」になってたんです。ああいう感じだよね、と思って挑んだら全然違った。

全体 古今伝授の太刀 熊本県立美術館 感謝をこめて魅せます!

(2021年4月 熊本県立美術館にて撮影)

これで見るの3回目だし、熊本では写真も撮れたから印象により残ってていいはずなのに、不思議だなあ……と首を捻りながら見ていた。

しみじみと「細長いなあ」と思います。細い直刃が際立つし、きっさきがものすごくちっちゃいし……というのもあるんだけど、なかご(持ち手の部分)による印象が大きい気がする。

茎 古今伝授の太刀 熊本県立美術館 感謝をこめて魅せます!

(2021年4月 熊本県立美術館にて撮影)

雉腿……1回カクンと段がつく形、のなかごです。それが、この写真を見てもあまりそうは思わないんだけど、今回見た時はすごくギュッとカーブして見えた。刀を置く重心のバランスの問題だろうか。細いやつがギュッと曲がって見えるから、なおさら「尋常じゃないもの」って感じがする。細くて、長くて……なんか「開脚してペターンと床に体つけちゃってるバレリーナを見てる」ときの「うおお」って感じと似てる。

肌・彫刻 古今伝授の太刀 熊本県立美術館 感謝をこめて魅せます!

(2021年4月 熊本県立美術館にて撮影)

「彫り、こんなんだっけ?」と思ったんだけど、前見た時は台の布で隠れちゃってたせいなんだろうな。今回は透明アクリルの台に乗せられてるので、彫りとかも余すことなく見ることができます。

そう、今回の展示、ガラスケースと刀の距離がめちゃめちゃ近いんです。15cmくらいしかないんじゃないかな。すっごくキワキワに配置してくれてるので、その辺りもお楽しみください。

古今伝授の太刀、まだまだわからないことが多い刀だ、と思う。回を重ねることで知っていきたいです。

11 国宝 短刀 銘 則重(日本一則重)

わたしは罰当たりなので「則重ってもんはなあ!もっと、もっと……!」って思っちゃった、国宝の則重です。

トーハクの則重が好きなんですけど、

短刀の則重

東京国立博物館 短刀 越中則重 刃文

東京国立博物館 短刀 越中則重 肌

東京国立博物館 短刀 越中則重

太刀の則重

肌 太刀 越中則重 東京国立博物館

肌 太刀 越中則重 東京国立博物館

太刀 越中則重 東京国立博物館

わかるか、このうねうねが好きなんだ。でも永青文庫の国宝の則重はうねうねしてないんだ。いや刃文はうねうねしてるんだけど、肌がめちゃめちゃちゅるんとしてて、「うねうねは!うねうねはどこ!!」って思ってしまうような肌で。

今回国宝は4点展示されています。生駒光忠、古今伝授の太刀、それからこの則重と、あとは庖丁正宗。庖丁正宗は若干肌にうねりがあったけど、全体的にやっぱり、国宝って肌が綺麗なんですよね(もちろん全部ではないですが)。「国宝っぽい肌だな〜」って思う。

「永青文庫の国宝の則重は綺麗です、綺麗よ、綺麗だけどわたしは……!うねうねした則重が好き……」という、なんとも言えねえ感情になった則重、でした。

2階のソファで

永青文庫

永青文庫の2階のソファが大好き。その大好きなソファに座って、しばらくぼうっとできるくらいの混み具合でした。タイミングによっては刀の部屋がガラガラで、目の前独り占めみたいな時もありました。一応順路は決まっているけど、様子を見つつ柔軟に回るとよく見れるかもです。

10時過ぎに入って、出たのは12時ちょっと前。ソファでぼうっとする時間も含めてこれなので、所要時間は2時間見ておけば十分かな……と思ったんですが、そういえば2章の金工のあたりはかなりサラッと見てしまったんですよね(これは単眼鏡がないと無理だなと判断したので)。そこをじっくり見るとしたら、2時間くらい必要かな、と思います。好きな「田毎の月」の鍔が出ていて嬉しかった。

今回の展示を自分としてまとめると、
「圧の強さ絶対王者・生駒光忠」
「ヤッターブラボー!!!歌仙兼定」
「探究心オープナー・古今と則重」

でした。(今年に入ってからまとめを作るようにしています)

事前予約も(今見たところ)結構余裕があるようですし、2度3度見に来ることも可能かも。ご都合に合わせて楽しんでください。

永青文庫 揃い踏み細川の名刀たち

って感じの、永青文庫見てきたよの話でした!実は今回、椿山荘のコラボ宿泊プランでの観覧でしたので、ホテルのことは別の記事でお伝えしたいと思います。ここまで読んでいただいてありがとうございました!

▼書いたよ

▼4月29日に見納めしてきた