2023年5月7日まで開催中の「揃い踏み 細川の名刀たち-永青文庫の国宝登場-」も閉幕まで残りわずか。1月に一度訪問していますが、会期終了前に見納めしてきました。
2回目なのでさらっとのつもりだったんですが、なんか割と感想出てきたな……となったので、自分のために書き留めておく意味も含めての記事です。これから駆け込みで見に行く人の鑑賞のとっかかりになれば幸い。
行った日は4月29日(土)。ちょうど1日館長がいました。
国宝 刀 金象嵌銘 光忠 光徳(花押)生駒讃岐守所持(生駒光忠)
なんかもう、生駒って「つえ〜〜〜〜〜」って思っちゃう。刃文が本当に油彩とか水彩とか、そういう絵の具的に「描いた」みたいにくっきりしている。刀剣鑑賞ビギナーの人が最初にこれを見ちゃったら「刀って見るの簡単じゃん」って勘違いしちゃうかも(悪いことではないんですが)。
生駒に対する感覚って、「もう何度も金メダル取ってるアスリート」に対する感情に似てる。「ど〜せまたあんたが勝つんでしょ」みたいな。勝って当たり前、負けたら論外、でも勝ったら勝ったで「まあ予想通りだったな」って軽〜く流されちゃう、みたいな感じ。それが当人からしたらたまったもんじゃねえことも分かってはいるんだけど……
うん、生駒って、そういう感じある。
脇指 銘 備州長船経家 永享九年二月日
この経家ってすごいよね、会うと絶対「あ、あなたね」ってなるんだもん。
すっごい派手な刃文ってわけじゃない、めちゃめちゃ肌が綺麗ってわけでもない、でもこのスラーとスタッカートの並びみたいな刃文が妙に頭に残って、会うと毎回「あ、あなたね」となる。頭に焼き付いて離れないような類の刀ではないんだけど、会うと絶対「ああ、前にもお目にかかりましたよね」ってなる。ふしぎ。
刀 銘 濃州関住兼定作(歌仙兼定)
やっぱりやっぱり、ライティング完璧スタンティングオベーション歌仙兼定。あんたが主役だ。
もうとにかく刃文がとっても見やすいのです。きっさき斜め45度の位置に立つと、小丸に返る帽子の様子もくっきり見える。逆に肌の感じは抑えられてるよね、と(前回見た時は)思ってたんだけど、今回ちょっと遠目から見ると「あ、こう見れば肌も際立ってるかも」と思った。
2022年9月、熊本県立美術館で撮影
裏面も見づらいながら刃文を観察することができるんですが、表と裏で刃文がほとんど一緒なんですよね。……って話を前の記事でしたら、MMDモデリングをする人たちが「表裏刃文一緒で助かった」って話をしてたらしくて、なるほどなとなった。
2022年9月、熊本県立美術館で撮影
朝日の稜線のような刃文が永遠に好き。
国宝 太刀 銘 豊後国行平作(古今伝授の太刀)
歌仙を遠目で見て肌の様子を観察した、からの流れで古今伝授の太刀もまず遠目から見てみたんですが、その様子がしみじみと良かったです。姿もほっそり研ぎ澄まされたようで綺麗だし、なにより遠目でみた時の鉄の色が本当にきれい。
2021年4月、熊本県立美術館で撮影
行平の肌はよく「ねっとり」と表現されますけど、確かに羊羹っぽい雰囲気のある肌なんですよね。しっとりと粒子の細かい……600dpiくらいある……でも練り羊羹じゃなくて、水羊羹って感じがする。ちょっと涼やかな感じ。
そう、ここではあくまで「感じ」の話をしてます。だからたぶん、別の日とか、別の場所で見たらまた違った感想になるんだろうな(たぶん今日は初夏っぽい陽気だったから水羊羹の方が美味しそうだと思ってたんだろうし……)。そういう「鑑賞側のゆらぎ」によって対象が変わって見えることも、刀の面白さだと思います。
国宝 短刀 銘 則重(日本一則重)
納得できない国宝則重こと日本一則重。……いや「納得できない」のはわたしが勝手に言ってるだけなんですけど。
則重、うねうねの肌とか刃文とかが最強に魅力的だと思うんですが、これはうねうねが弱いんですよね。則重っぽいくない則重。とはいえ「国宝っぽい」ではあるんです、こういう綺麗めな刀が国宝になるってのはわかる。だからそれはそれで納得するんですけど、でも則重っぽいくない則重が「日本一!」って号で国宝になってるの……なんか、なんか、そこは釈然としない……!(わたしはうねうねの則重が好き)
前回一度見て、今回また見たら感想変わるかなと思ったんだけど、変わらなかった。よし、いつか和睦の日がくるまで戦い続けよう。
2回目ということもあり、滞在時間は1時間程度。そのうち10分くらいを2階のソファで費やしてたな(永青文庫の2階のソファが大好き……)。
会期終了まであとわずかとなった「揃い踏み 細川の名刀たち-永青文庫の国宝登場-」。GW初日でしたがそこまでひどい混み具合ではありませんでしたし、事前予約サイトを見ても余裕はありそうです。お隣の肥後細川庭園も合わせて、連休のお出かけにぜひどうぞ。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました!