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黒田のレゾンデートルとして『黒田侯爵家の名品』でへし切長谷部・日光一文字を見てきた/福岡市博物館 2023年11月5日まで

土曜日は金沢、日曜日は三島、月曜は岐阜、そして今日、火曜日は福岡にいます。なんなの?

水曜日に福岡県内で仕事があって、それに1日休みをくっつけて福岡市博物館の展示を見てきました。いった日は2023年10月31日(火)。

11:30、西新駅

新幹線でゆっくり移動して(飛行機に悪い思い出が多いので)、博多に着いたのは11:00。そこから10分くらいで、福岡市博物館もよりの西新駅に着くことができます。この日はまだ何も食べてなかったので、博物館に行く前にまずご飯。

米粉てんぷら工房 天

西新の4番出口を出て、商店街の細道を入ったところにある「米粉天ぷら工房 天」でお昼ご飯。カウンター7席、テーブル2つの小さなお店です!カウンターで定食を頼むとお寿司みたいに揚がった端からぽいぽいお皿に乗せてくれるので、ライブ感がある(ので、食べ物の写真を撮る余裕がなかった)。でも出来立て熱々なので、猫舌な人は丼の方が良いかも。

米粉で揚げてるから、薄いおせんべいごと食べてるようなもんなんだよね。美味しいんだけど、おせんべいなぶん腹に溜まるので、普段食べる量より気持ち少なめかな?って感じのメニューを選ぶと良いかと思います。強欲なので一番高いメニュー(超贅沢天定食 2500円)を食べましたが、最初の3品くらいでそこそこお腹いっぱいだった。でも夜の創作天ぷらメニュー気になるんだよな〜!

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12:30、博物館へ

福岡市博物館

お腹いっぱいになってから、ゆっくり博物館へ移動。現在福岡市博物館では『黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史』と題した特別展を開催しています。

黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

旧大名家の名を冠した特別展といえば、有名な武将の人生を関連する品々を通して紹介するもの、あるいは大名家だからこその豊富な美術品を紹介する、といったものが多いかと思います。

でも今回は「『家宝』の近代史」。黒田家に伝わった品々はどのように「家宝」として設定されたのか、時代が降るにつれどのように家宝が手放され、そして一部は戻ってきたのか。なぜ今、黒田家の「家宝」が福岡市博物館にあるのか。そういった部分を紐解いていく特別展です。

第1章 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

「家宝」は武具や古文書など様々ですが、今回の展示で強調されているように感じたのは、それらが「黒田の存在理由を示すもの」である点です。

黒田如水辞世和歌短冊 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

黒田如水辞世和歌短冊

黒田如水(官兵衛)から始まる一族の長たちが、どのように生き、どのように戦い、どのように貢献し、どのように遺言を残したのか。彼らの人生の記録、物語、歴史。

第2章 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

黒田家重宝故実 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

黒田家重宝故実(3代藩主 黒田光之の時代にまとめられた所蔵品の目録。この中で「重宝」として記載されたものが、後に黒田家の「家宝」の中心となりました)

自分たちはこのように生きてきたのだ、という証。その文脈で語られる刀、というのは、ちょっとエモいものがあります。

へし切長谷部・日光一文字 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

本展には10振りほどの刀剣類が展示されていますが、そのうち何振りかをご紹介します。

脇差 名物「碇切」

脇差 名物「碇切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

「黒田家重宝故実」では黒田長政が朝鮮出兵の時に敵を碇と共に切り落とした、
「享保名物帳」では黒田如水が朝鮮出発の際に碇を切って出航した
……と、どこかで伝言ゲームのミスがあったのかな?みたいなややこしい2説が伝わっている「碇(いかり)切」です。

刃文 脇差 名物「碇切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

名前のイメージもあって、刃文の線がさざなみのようで良かった。

刀 和泉守兼定

刀 和泉守兼定 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

黒田、兼定持ってたんだ!黒田長政が所持し、中川左平太という人が試し斬りを行ったとする金象嵌銘が入っています。

なかご 刀 和泉守兼定 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

「和泉守兼定」と言われると幕末?と思っちゃうかもしれませんが、こちらは2代目の兼定、つまり之定の作……でも銘が全然わからんな。「黒田長政が戰のたびに帯刀し、武功をあげた」とされます。ずいぶん実戦向きの刀だったらしい。

刃文 刀 和泉守兼定 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

同じく美濃の刀、関の兼元も展示されていました。

刀 大仙兼元

銘 刀 大仙兼元 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

明治時代以降の刀剣台帳に「初代藩主黒田長政から黒田忠之に贈られた」と記載されている……ということですが、明治以降の資料だからちょっと慎重なとこがあるのかな。あまり大々的に「長政様のです!」ってアピはされてませんでした。

刃文 刀 大仙兼元 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

わっかりやすい三本杉の刃文。これもそうだし、兼定もそうだし、長政公は実戦向きの刀もしっかり好きだったのかな、と思わされます。

でも、さらに「実戦感」を感じるのは安宅切でした。

刀 名物「安宅切」

刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

まさかと思ったんだけど、わたしもしかして安宅切を見たの初めて……?もしかしたら侍展で見てるかもしれないんだけど、図録が家にあるので詳細を確認できない。侍展で4K映像を見た覚えはある。

なかご 刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

というのも、思ってたよりずっと華美ではない刀だなって思ったんです。

きっさき 刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

何かの跡が残っているようなものうち〜きっさきの様子に、

刃文 刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

味はあるんだけど、「美しい」からはちょっと遠いかなって感じの刃文(この刃文、ちょうど同じ部屋にあったふさふさの采配と感じが似てるなって思った)。

白熊采配 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

白熊采配

拵えも使い込まれてます。金色のぽつぽつは所々潰れているし、

拵え 刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

柄も、少しハゲてきてる。

柄 刀 名物「安宅切」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

で、この安宅切とオソロの拵えを持ってるのがへし切長谷部です。

刀 名物「圧切長谷部」

柄 刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

へし切長谷部、所蔵館の表記では「圧切長谷部」となっています。読み方は一緒。こうやって見比べると、同じデザインでも全然使い込まれ感が違うふた振り。

刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

あらためて全体を確認すると……わたし今回、「あれっ、長谷部ってこんなんだっけ?」と思っちゃったんです。最初は理由がよく分からなかったんだけど……

刃文 刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

なかご 刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

「あっ、いつもと逆向きで展示されてるんだ!」

パネル 刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

たぶん裏側展示って過去の特別展でもあったと思うんですけど(京のかたな展とかでやってた気がする(気がする))、ともかくわたしがよく見ているのは「黒田筑前守」の銘が見える向き。長谷部うんたらが入ってる方は、あまり馴染みがなかったんです。ああなるほど、案外印象が違うものなんだな……

きっさき 刀 名物「圧切長谷部」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

そんな「いつもとちょっと違う長谷部」ですが、その長谷部と見比べて「案外ニコイチ感あるかも」と思ったのが、すぐお隣に展示されていた日光一文字。

太刀 名物「日光一文字」

太刀 名物「日光一文字」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

今回の展示、ライティングがすごくかっこよかったです。刃文の見えやすさはもちろん、写真に撮ったときに「(人間で言うとこの)彫りが深く見える」みたいな感じがあった。

刃文 太刀 名物「日光一文字」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

日光一文字、もちろん一文字らしい華やかな丁子の刃文(タコさんの頭みたいなポコポコした刃文)なのですが、加えて飛び焼きが結構多い。

飛び焼き 太刀 名物「日光一文字」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

きっさきの方なんて、特にね。この自由な飛び焼きっぷりが、なんかちょっと長谷部に似てる。血が繋がってないのに、他人のそら似みたいな。

手元 太刀 名物「日光一文字」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

日光一文字自体は見たことあったけど、写真を撮ったのは初めてのような気がするな……と思ったんだけどブログを見返したらそんなことなくて、実はこれも前見た時と反対側が展示されてた、ってオチだった。となると、長谷部も日光も後ろ姿(背面)が似てるってことになるのか。へ〜え……(審神者の悪い癖)

今回の展示では法螺貝とか葡萄の箱とかも見れます。

箱 太刀 名物「日光一文字」 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

北条白貝 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

北条白貝

移り変わる時代の中で

「重宝」やその他の名目で伝わったモノたちは、明治以降、黒田家が侯爵となっていた時代に「家宝」として整理されていきます。家宝には天皇家から拝領したものや、旧藩士より寄贈された品物なども加わっていきました。そのひとつが日本号。

日本号 福岡市博物館

(日本号は今回の特別展のラインナップには入っていませんが、同じチケットで入れる常設展にて見ることができます)

龍 日本号 福岡市博物館

肌 日本号 福岡市博物館

刀身 日本号 福岡市博物館

螺鈿 日本号 福岡市博物館

日本号は旧福岡藩士の阿部敬一郎男爵より寄贈されており、今回の展示ではその感謝状や、お礼にあげた掛け軸が展示されています。

感謝状 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

感謝状

鶴・亀・寿老人図 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

鶴・亀・寿老人図

鶴・亀・寿老人図 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

一方、他の旧大名家と同様に、手放されていくものも。昭和13年(1938)には初の入札会が行われ、昭和17年(1942)にはさらに大規模な入札を実施しています。

戦争の足音のする時代の中、黒田家の最後の侯爵となったのは黒田長禮(ながみち)。鳥類学者としても知られます。

黒田長禮講演原稿 福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

黒田長禮講演原稿(蜂須賀家の侯爵である蜂須賀正氏もドードーなどを研究した鳥類学者ですが、以前蜂須賀氏の伝記本を読んだ際、黒田の名前も見かけました)

戦後の混乱の中、残った家宝を家宝を維持保管していくことは難しく、長禮氏は福岡市に移管することを決定。でも志半ばで没してしまい、そのプロジェクトは夫人と子が引き継ぎ、完遂されました。黒田の存在意義を示す品々、レゾンデートルの品々は今、福岡市博物館の所蔵品として見ることができます。

福岡市博物館 黒田長政没後400年 黒田侯爵家の名品 知られざる黒田家「家宝」の近代史

そんな物語性のある展示。やっぱり武将にフォーカスした展示の方がキャッチーでわかりやすい感はあるけれど、こういった「近代史」の展示も良いなあと思います。

展示終了が11月5日とギリギリですので、滑り込みで見てどうぞ!とはお薦めしにくいですが、もし連休を利用して見られる方などいれば、ぜひゆっくり見ていってください。わたしはトータルで2時間ほどの滞在でした。

展示品リスト(PDF)
展示ページ

りんご飴って美味しいんだね

フルーツクローゼットカフェ

博物館帰りには、西新駅までいく途中にあるカフェ「フルーツクローゼットカフェ」で糖分補給しました。

フルーツクローゼットカフェ

スーパーにくっついてる店舗で、りんご飴のお店です。わたし、りんご飴ってお祭りとかでも食べたことなくて。最近カットされてるりんご飴のお店をちょいちょい見かけるから、ちょっと食べてみたいなと思ってたんです。りんご飴って美味しいんだね。

それから、西新駅にくっついてる商業施設「PRALIVA」で軽食とコーヒーを買い込み。

PRALIVAで買ったもの

今回天ぷら屋さんに行くためにいつもと反対側の出口から出たんだけど、それで初めてこんな商業施設ができてることを知りました。いつもは博物館まっしぐらで、地下道通っちゃうから気づかなかったんだ。如水庵とか明太子のふくやとかも入ってたので、ここでお土産買い揃えられそうな感じする。地下フロアのパン屋さんとコーヒー屋さんで買い物をしてから、市内のホテルにチェックインしました。

そんな福岡の1日の日記でした。ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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