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信濃と五虎退に会ってきた~鑑賞レポの巻

仕事が遅れてるけど「今日は残れないんで月曜日もりもり残業します」って宣言して
金曜日は定時ダッシュしました。
バカンスのために生きてます。いざなみです。

金曜日定時ダッシュして、夜行バスに乗って、山形県鶴岡市まで行ってきました!

山形県鶴岡市、致道博物館

致道博物館 Official site

鶴岡市にある致道博物館にて、信濃藤四郎が展示中です。
期間は2017/4/29~6/8で、刀剣乱舞とのコラボも各種実施中。

去年の10月に信濃が展示されたときも一度鶴岡に行っていますので、これで2回目です。

5/27・28は米沢から五虎退が出張してきて展示されます。
わたしは27日に訪問しましたので、ちょうど二振りが隣り合って展示されてるのを見ることができました!

6/3・4乱藤四郎も展示されます。

さて、今回の遠征の記事についてはふたつに分けまして、
この記事で博物館でも鑑賞レポを、
もうひとつの記事で行きかえりの交通のこととか、現地での観光や食べたもののこととかを書こうと思います。
好きなように取捨選択して要らないとこは適当に読み飛ばしてどうぞ!!

今回の展示、
見どころ学べる!目で観る刀の教科書
~日本刀剣博物技術研究財団管理コレクションより~

とのタイトルがついているんですが、これ、このあいだ奈良の薬師寺でやってたやつの巡回展に近い感じなのです。

なのでこのあいだ見た刀とか、もっと遡って夏に中鉢美術館で見たことあるやつに再会したりとか~
そんななかで気になったものを箇条書きレポいきますね~

●銘 安綱 太刀 (重要刀剣)

安綱といえば、童子切と同じ作者ですね。
在銘でもっとも古い刀工とされていますが、作刀していた時期についても800~1200年前まで諸説があり、
結局いつの時代の人なのかいまいちはっきりしてない、というのがこのひと。

それくらい古い時代になると識字率も低くて、一部の階級の人以外にとっては文字というのは文字と言うより記号みたいだった
なんてことも聞くんですけど、
安綱の銘見るとめっちゃそれわかる~~~ってなります。

ノート 伯耆安綱太刀

これは静嘉堂文庫で見た安綱のメモ。
今回展示されていた安綱も同じような銘で、「安綱って知ってるから安綱って読めるけどさ~~~」って思いました。かわいいのお。

刃文がすごく幅狭くてきゅっとした直刃で、それもすごくきれいだったんですけど、
映りが、めっちゃ綺麗で!

もやがかかってるみたいな、霧がかぶさってるみたいな、
割とブロック状にかたまった映りがぼとぼとと入っているのですよ
きれいだった~~

●銘 正恒 刀 (特別重要刀剣)

この正恒は折り返し銘だったんですよー!
なにげに折り返し銘の実物を見るのって初めてだった気がする。(きがする)

折り返し銘のわかりやすい画像とかないかな~と思って探したらオークションサイトで折り返し銘の刀が出てました。

新刀 折り返し銘「近江大掾藤原忠広」 研磨済み  – 美術*刀剣*専門*オークション!WINNERS(ウィナーズ)

折り返し銘ってぱたんと折ったみたいになってるのかと思いきや、
けっこう折り返された部分が細っこくされてるんですね。

これは折り返し銘だ!って思って立ち止まったんですけど、
よくよく見ると肌がおっそろしいんですよ!

しっかり杢目がわかりやすく見える肌だったんですが、
杢目の上にすっごい細かい粒子が被さってるんです。
なんかそれが、杢目の上にフィルターかけて粒子のぎらぎらが見えてるみたいで、
レイヤー統合してくださいいいい!!みたいなおっかなさ。
なにがおこってんのわかんないこわい、ってかんじ。

備前だから映りどうかな~?と思って覗き込むと、
しのぎから刃への角度で見えるグラデーションがすごくしっかり強いのです。映りはなかったと思う、たぶん。
川の、深いところってすごく濃い青緑になるでしょう?ああいう深みみたいな色に感じました。

なんというか、オーパーツみたいな怖さを感じた。これ平安中期の作です。こっわ。

ノート 致道博物館 正恒 正宗

●需要刀剣 銘 正宗 太刀
 金象嵌銘 道芝之露 於大阪城 下賜真田幸村

ん??おまえ会ったことある??やっぱり~~!!!
となったやつでした。夏に中鉢で見た。
ものうちのあたりの刃文が特徴的なので見たら忘れないなあって。

夏の陣の下賜されたというけれど、けっこうてんてこ舞いだったんじゃないの夏の陣
どのタイミングで下賜されたんだろうね。

関係ない話しますけど、巷で噂されてるように次の刀ミュが大阪城だったらわたしは健やかに死にます。
おれたちはここでやけるのだ。

●銘 月山正信作 刀 裏銘 永正二年八月吉 (鶴岡市指定文化財)

月山です。月山って鶴岡にある。
月山派は出羽国の月山で始まったのですが、それが幕末に大阪に移住して現在まで残っています。
奈良にも月山という地名がありますが、はじまりはこっちってことみたいです(で合ってると思う)。

刀 銘 月山正信作 永正二年八月吉 文化遺産オンライン

おお、文化遺産オンラインに載ってた!この刀が出ていました!

2尺3寸もあるのに平造りで、がっしりして幅広く、カーブの具合も優美というより素朴な印象でした。
刃文はなみなみとしていて、それを引き延ばしたみたいな映りが入っています。
からの、さらにそこから連続するみたいにうごめく綾杉肌。

綾杉肌って曼荼羅みたいというか、宗教的、密教的な印象をすごく持ってるんですけど、
これほんとそういう雰囲気びんびんに来るんです。
ほとけさまを前にしてるみたいな、ははあ~って嘆息というか、畏怖というか、
なんかそういう方向の怖さがあるんです、こわいこわい。

今回の展示で一番インパクトあるのこれだったかな、ってレベルの一振りでした。こわいこわい。

ノート 致道博物館 月山 三条長吉

●銘 三条長吉作脇差

これは「妖刀村正」の列にいた一振りです。
2代村正の弟子で、平安城吉則の子。

草の倶利伽羅と、蓮台の彫り物があるのですが、
この草の倶利伽羅がとても素敵な彫りだったのです。

草の倶利伽羅、と言ってますが、倶利伽羅龍の彫りは細かさによって真、行、草の3つに区分されます。
草がいちばん細かくないやつ。

倶利伽羅 – Privatter

こちらとか参考になるかな。

妙法村正の画像ですが、こういうのは草の倶利伽羅。
たぶん日本号なんかは真の倶利伽羅ですよね。

日本号

でね、この展示されてた刀の倶利伽羅龍なんですが、
草って言われてるし近しい村正の草の倶利伽羅も上の妙法村正のようなものがあるんですが、
それと全然ちがってとってもさらっとした倶利伽羅だったんです。

刀身彫り:草の倶利伽羅の研究

こちらのサイトで草の倶利伽羅の研究としていろんな倶利伽羅彫りの画像が載ってるんですが、
「6.山城、伊勢、駿河、豊後の室町後期の彫り」に長吉のがありますね。
(同じ長吉さんだといいんですけど)

印象ですから確かではないですが、わたしが見たのはこれよりもっと龍の線が細かったように思います。
もうね、龍っていうか、蔦がからまっているみたいな。
そのなめらかな感じがとっても好みでした。

ノート 信濃藤四郎 五虎退

●五虎退・信濃藤四郎

ふたふり隣り合っての展示でした!思う存分見比べられたし、

戦国時代展で見たとき、五虎退の展示位置が高くて見づらかったけど、
今回はしっかりばっちり見れたんで大満足です!

ふたふりを比べて見たとき、若干五虎退の方が長いように感じたんですが、
後からデータを見てみると
五虎退:24.8cm
信濃:25cm

でほぼ同じっていうか若干信濃の方が大きいのにね!っていう不思議。

五虎退のほうが長く見えた要因は、五虎退のほうが細身で、信濃のほうが幅が広かったせいかと思います。
大学で単位のために取った心理学の授業でこういうのやった!目の錯覚!

信濃のほうがふくらふっくらです。五虎退は鋭い。
でもなかごは信濃の方が小ぶりな感じがしますし、なかご尻はふたふり結構形違いますね。
護摩箸の彫りはお揃いです。お揃いだね~って思うと途端にかわいく見える。かわいい。

ノート 五虎退

五虎退はほわほわ映りが見えるような気がしたんですが、あんまり自身がないです。
刃文と峰に沿って、刀を縁取るみたいに白くふわふわが見えるように思ったんですが、
う~ん映りって刀身に入るのが多いもんなあ、研ぎとか手入れの具合でこういう風に見えるだけかもしれない?よくわからないです。

刃文のふちがきゅっと締まっていて、迷いのないまっすぐ直刃です。
線のぴしっとした感じがとてもまぶしく輝きます。
きっさきより少し下ったところに、ひっかき傷みたいな強めの線が肌に入っていました。

ノート 信濃藤四郎

一方信濃は、刃文のふちの線が五虎退ほど細くなく、太目で緩やかなだらかな印象。
でも五虎退と同じく真っすぐな直刃です。潔い美しい。
特にきっさきの部分。がっつり主張してる感じの刃文してます。

姿も刃文も、五虎退より鋭くない印象です。がっしりしています。
そして10月に見たときも思ったけれど、肌のつやぴか具合がやばい!
なかごからきっさきへスライドして見ていると、肌のキラキラで目がやられます。まぶしいったらない!
五虎退は強めの線がありましたが、信濃にはそういうのがなく、全面すらっとつるっときらきらぴかぴかです。

信濃と薬研ってとても似ている刀だった、って前~にツイッターで見かけたんですが、
今回信濃のきっさきの刃文をちゃんと捉えることができて、それを見て、
最近完成した薬研藤四郎写し、切先の刃文がとても特徴的だなって思ったことを思い出しました。

そして自分でも納得いかなくて(←?)めっちゃケースの前で悩んでたんですけど、悩んだ結果、
信濃と五虎退だったら五虎退の方が白い気がする
という結論に至りました。

だってさー!前に信濃見たときに「色白!もち肌!ルースパウダーはたいてる!!」って感動したもんだから
その信濃より白いか?白いのか五虎退!?!?って過去の自分を打ち消すことにとても躊躇した。

でも、「この二振りどちらで自刃する?」の回答は「信濃はない」でした。
やっぱ信濃は使えない。信濃使って自刃はできない、みたいな感じある。ここは変わらなかった。

こういうこと考えながら2時間くらい博物館に時間を費やしました。

致道博物館

さてさてこんな具合で鑑賞レポ編は以上とさせていただきます!
あと同田貫さんのあの白いのが血の錆びのあとってのがかっこよかったな!
次は観光編の記事を書きますよ!

なにかの足しになってれば幸いです!
ここまで読んでくださってありがとうございました!